
前職で体調を崩して現場を離れ、大学で教え始めてから3年が経つ。週に最多6日もの出張をこなす生活では、移動の大半を新幹線・夜行バス・カプセルホテルで過ごすことになり、腰を据えてデスクトップ作業ができる環境などまず整わない。さらに追い打ちをかけたのが、度重なる移動とスマートフォン依存による姿勢の悪化だ。ストレートネックが進行して頸椎を痛め、深刻な首・肩こりを常に抱えるようになっていた。
そんなタイミングで話題になったのがXREALだ。2025年夏、X(旧Twitter)でARグラスを装着したままFGO(Fate/Grand Orde
r)をプレイする動画が大バズりし、「ARグラスがついに現実的に使える段階に入った」と多くの人が認識した瞬間だった。
移動中の作業環境と慢性的な首の痛み、どちらも深刻だった私は、かなり悩みつつもXREAL One Proの購入を決意。度付きレンズも同時に注文し、いざ試してみると──これが思いのほか快適だった。
① 驚くほど使えた点
まず、57°の視野角がもたらす没入感は想像以上だ。VRになれている人は110°や130°になれていると思うが、ARディスプレイでは周辺視野は必要ない。
ウルトラワイドの仮想画面に包まれるような感覚はデュアルディスプレイを超える生産性をもたらし、空間固定機能のおかげで首を動かしても画面は定位置を保ってくれる。首振り時の”揺れ”をガウシアン補正でなめらかに吸収するダンパー機能のおかげで長時間使っても酔わない。これだけで、出張先のビジネスホテルがちょっとしたワークスペースに変わった。
意外だったのが目の疲労感だ。長時間作業で目がチカチカして「もうPC作業は無理」というときでも、XREAL One Proに切り替えると不思議と続けられる。モニターとの距離感や光量の違いなのか、むしろ目が回復していく感覚すらある。
寝転がって使えるようになったことで、首への負担も劇的に減った。外出先ではシースルーモードを切り替えることで、ブラックアウト・半透明・サングラスの3段階で環境光をコントロールでき、周囲にも画面の内容が見えないためプライバシーもしっかり確保できる。
そして最大の誤算が音質だ。私は30万円超えの高級ヘッドフォンシステムを所有しているが、XREAL One Proの内蔵アンプとスピーカーはその音質に肩を並べる、いや体感では凌駕している。高域の伸びも低域の量感も最強クラスで、「音楽を聴くためだけに買っても元が取れる」と本気で思っている。
② 致命的に惜しい点
完璧には程遠い部分も正直に書いておく。
最も深刻なのは発熱だ。本体内部でトラッキング処理を行っているため、使用中は本体上部──ちょうどまぶたの上あたり──が触るのを躊躇うほど高温になる。夏場は低温やけどを心配するレベルで、目への長期的な影響が気になるところだ。
次に外見問題。どんな場面で装着しても目玉が飛び出しているように見える。非常に不自然なのだ。
“ガジェットオタク全開”な見た目になってしまい、人前では正直あまり使いたくない。XREALはなぜもっとデザインに力を入れないのか、本当に不思議だ。
57°という広い視野角の裏返しとして、手元がほぼ見えないのも困りものだ。お茶をこぼす、ケーブルを誤って抜く、そんな事故が頻発した。物理キーボードとの併用はかなり難しい。
アスペクト比が16:9(フルHD)固定なため、クリエイティブ系ツールが使いにくいのも難点。
Nintendo Switchなどのゲーム機との接続にも対応しておらず(一部のコネクターで成功した報告もあるが、私の環境では不可能だった)、目が悪い人は別途オプションレンズをメガネ店に発注する必要があり、手元に届くまでに約1ヶ月かかったことも地味にストレスだった。
結論:ARグラスは実用段階に入った。でも、”人前”ではまだ使えない。
総じて満足度は高い。
ARグラスを真に実用的なレベルまで引き上げ、市場の評価を塗り替えた功績は本物だ。移動中の生産性向上と首への負担軽減という私の課題をしっかり解決してくれた。
ただ、発熱問題と圧倒的に残念なデザインが大きくテンションを下げる。気づけば「一人のときにこっそり使う道具」になってしまっている。それだけに、次世代モデルへの期待は大きい。


