目次
おまたせしました!!
おまたせしすぎたかもしれません🎥
以前からTwitterでちょくちょく投稿させていただいていた3Dスキャン関連の記事を、Creality様のご協力のもと、ようやく記事としてお届けできる状態になりました
安価で高性能な3Dスキャナーが登場した
2021年、次々と5~10万円程度で購入できる安価で超高性能な3Dスキャナーが登場しました。
これまでは3Dスキャナーといえば、数百万するのが当然の世界だったので、技術的なブレイクスルーが起こったと言っていいと思います。
昨年はPOP2やiPhone13などが低価格で購入できる3Dスキャナーとして話題になりましたよね。
今回は、Crealityさんから発売前の低価格高性能スキャナー『CR-Scan Lizard』を提供いただいたので、こちらを使用して3Dスキャナーについて語っていきたいと思います。
iPhoneのスキャナーは、専用機に比べるとおまけ程度の性能しかないのと、昨年話題になったPOP2と比べると、カタログスペックが倍の0.05mmになっていることと、POP2をはじめ既存の低価格帯スキャナーが苦手としていた黒い物体を余裕でスキャンできてしまうところなどが『CR-Scan Lizard』のすごいところです。
注)POP2もファームウェアのアップデートで0.05mm精度が出せるようになると告知がありました。
価格もPOP2より安価なので、より低価格でより高性能なスキャナーが入手可能になったと思います。
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日本発売前のCreality『CR-Scan Lizard』が届いた!
実は海外で先行販売していたLizardがかなり高精度だという噂はYoutubeなどで知っていました。
そのことをTwitterでつぶやいていると、開発元のCrealityさんからメールをいただき、なんと発売前に提供いただけることになりました。
梱包はかなり丁寧で、専用の保護ケースに入って到着しました。
内容物もシンプルでわかりやすく、青と黄色のスリーブが付属しているのが嬉しいです。ハンディスキャナーは取り回しが重要なので、シリコンのスリーブがあると安心感があり使用が断然楽になります。
全面ガラス張りの3Dスキャナーなどは、指紋を気にしたり、傷つかないようにとかかなり気を使うので、レンズが奥にありスリーブまで付属しているLizardはかなりラフに使えてよいです。
ターンテーブルはあえて複雑な制御などはなく、電源をつなぐとゆっくり回り続ける汎用的なもの。これも良いですね。
天板にはおしゃれなアルファベットのパターンがあり、ソフトウェア側で天板を認識して自動で削除してくれます。
これが感動したのですが、専用のコネクターがマイク端子のようなロック機構付きのしっかりしたものになっていて、ハンディスキャンとして扱うときもかなりの安心感があって良いです。
今まで様々な3Dスキャナーを使用してきましたが、電源ケーブルやらUSBやらで配線がひどいものが多かったので、こちらはかなり良いです。
さっそく黒いものを3Dスキャンしてみた
黒いものがスキャンできる、と謳っていたので早速3Dスキャンをしてみました。
ターンテーブルモードとハンディスキャナーモードの2つが選択できて、ターンテーブルモードだと天板を事前にスキャンすることで自動で床面を消すことができます。かなり優秀ですね。
ターンテーブルの上に黒いマウスを置いて、スキャン開始。暗所の撮影ではライトが点滅してかっこいいです。
PCソフトの方ではこの様に、モリモリ3Dの点群《ポイントクラウド》が生成されていきます。
土台を消して、裏面も再現したい場合はヒックリ返してもう一度スキャン。
専用ソフトで大体の位置を合わせると、自動合成してメッシュ化、テクスチャ化まで勝手にやってくれます。
注)カラーキットを購入しない場合、白黒テクスチャしかつかないので要注意です。
ただ、白黒の分、精度が高く形状をスキャンできているんじゃないかなと思います。
こんな感じで、黒いマウスが一瞬でスキャンできました。
とても早いし、気軽でいいです。
高額なスキャナーは、取り回しが悪く、コレをスキャンするだけでも半日くらいとられてしまいますがLizardなら3分くらいでパパっとスキャンできてしまいます。
PCスペックには要注意
最初にSurfaceGoでスキャンしてみたのですが、スペックが足りないのかうまく動きませんでした。デスクトップに繋いだら問題なく動作しました。
Lizardの問題ではなく、3Dスキャンは非常に大量のデータをリアルタイムで扱うことになるため、スペック高めのPCを使用したほうが良いです。スキャンデータって数GBのデータが瞬時に生成されていくので、ショボいPCだとそもそも無理があるんですよね。
この記事を読んでいる方でうまくいかない方がいましたら、PCの推奨スペックを確認してみると良いと思います。
粘土で作ったドラゴンをスキャンしてみた
実際にオリジナルのモデルをスキャンしてみようということで、以前から3Dスキャンの検証に使っている手作りのドラゴンの粘土細工をスキャンしてみました。
Einscanの20万円以上するスキャナーに近いクオリティが、ものすごい気軽にスキャンできるので、これはなかなか良いです。
ポスト処理とメッシュ化
角度を変えて2回に分けて撮影し、付属ソフトで合成しました。
付属ソフトもかなり優秀で、点群のイチ合わせや貼り合わせ、メッシュ化がかなり綺麗です。
スキャナーだけが優秀でも意味がなくて、点群を張り合わせたり、合成したり、メッシュ化するポスト処理の部分がかなり肝になってきます。
ZBrushでの手直しとリトポ
ZBrushで3Dスキャンデータを元に、形状を整えていきます。
今回は粘土モデル自体がかなり荒削りですから、本来はあまり必要ない工程かもしれません。
スキャンデータはかなり重く、数GBあるのが普通なので、ZBrushのDesimationMasterやZRemesher、ProjectionAllなどで軽量だけどディティールは保たれているデータを作ります。
実用データ化
スキャンモデルは、重いので実用的なデータに作り変える必要があります。
その一つの方法がリトポロジー、リメッシュと呼ばれる、面を貼り直してローポリゴンメッシュを作成していく工程になります。半自動+手直しくらいでいい感じになるので、この工程を踏んだほうが良いです。
この工程を一瞬で行うために東京大学の中島先生にお願いして作成してもらったZBrushアドオンをBoothで公開しているので、リンクを張っておきます。https://mask3dcg.booth.pm/items/3557940
このあたりの3Dスキャンのポスト処理については、また別の掘り下げが必要なので、またの機会にあらためて紹介しようと思います。
先月CGWORLDのYoutube番組で30分くらいスキャンアバターとZBrushについて語らせていただいたので、気になる方はこちら合わせてチェックしてみてください。
3Dペイントでテクスチャ作成して完成
スキャンデータをリトポして、ローポリの実用データにしたら、テクスチャを詰めて行けば、実務でも使用できる3Dアセットとしていよいよ成立するところまで来ます。
テクスチャの前にUVを開いて、今回は機能検証がてら、AdobeSubstancePainterを使用して自動塗りしてみました。
海外のゲームに出てきそうな、手描き風のスタイライズドに仕上がっていい感じですね。
アナログとデジタルの架け橋
低価格で取り回しのよい3Dスキャナーは、アナログ造形とデジタル造形の垣根をなくすのに一役買うと思います。
何かを作る時に全部3Dソフトで作り始める必要はありませんからね。手触りや大きさ感などもあるので、今回のようにはじめにクレイモデルを作成し、3Dスキャンで取り込んでからデータとして作り込んでいくような作り方は非常に魅力的です。
実は昨年、ネットフリックスでLOLのアニメシリーズARCANEに衝撃を受けてから、海外風のスタイライズド技法を研究していました。この研究成果はまた別の記事でまとめるとして、粘土で作った造形から、ここまで持ってこれるのはかなりすごいことですよね。
私は実際にロサンゼルスのいくつかのCGスタジオに足を運んだことがあるのですが、
一流の映画やゲームスタジオでは、ファインアート、つまり、アナログのクレイモデルからキャラクターを作成することが少なくありません。
ハリウッドのAAAスタジオで行われているようなクレイモデル→3Dスキャン→アニメやゲームの3Dモデル作成という本格的な夢のフローが、たったの5万円の3Dスキャナーで実現する時代になったのが恐ろしいことです。
ちょっと宣伝
今回の取組も、ブログ用にかなり簡略化して書かせていただきましたが、実はFANBOXの雑記帳ではかなり詳細に手順の解説や、公共の場では言いにくい所感、センシティブだったり、引用が多めの技術資料を大量に共有しています。
内容的に無料で誰でも読める状態で一般公開しにくいものも多かったり、ブログを収益化していない都合もあり、活動資金の都合なども考慮し日々の備忘録やメイキング支援者様限定で公開するに至った感じです。
こういった技術寄りの解説などが気になる方は、ご支援いただけると、ブログなどの情報発信や作品制作に時間を多く割けるため非常にありがたいです。
提供、スポンサードお待ちしています
3DCGは高額な機材やソフトウェアを多用するため、今回のCreality様にご協力いただいたように、個人の力では実現しにくい企画がかなり多いです。企業様からの協賛、スポンサード、お待ちしています。
ご支援いただけた分だけ、面白い企画や無料や安価なアセットを提供して還元して参りたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
Creality『CR-Scan Lizard』はクラウドファンディングで早期購入可能
最後になりますが、クラウドファンディングサイトのマクアケで、早期割り引きで購入できます!
5万円台とこの精度帯のスキャナーとしては最も安く購入できる機会なので、ぜひ出資していただきたいです。
割引価格で購入できるのは2022年7月末までなので、お得にゲットしましょう!
https://www.makuake.com/project/creality/
3Dペイントの詳細記事に続きます
Twitterでもプチバズりしたので、3Dペイントの方のメイキングを楽しみにしてくださっている方もいるかもしれません。
続編記事として、手描きを全くせず、機能だけで自動的にスタイライズドテクスチャを作成する手順を紹介しているので、
こちらも合わせてお読みください。